ORIちゃんの地球の潜り方

その30 =ダイビングの安全性は何処で確保するか?=

 昔も今も、ダイビングの安全性について、浮上速度に関する話題は尽きない。

# 「浮上速度は遅いほうがいい・・・」これはもちろんである。

  筆者がCカードを取得したころは毎分15mを超えないことと言われたが、今はこれよりずっと遅く、毎分10m以下のようである。
 しかし、遅ければよいからといって、どんどん遅くしていったら、いずれはテクニカルダイバーの域にいってしまうのではないだろうか。このままではレジャーダイビングが成り立たなくなるのではないか?
 お手軽・簡単すぎるのもよくないが、その逆もどうかと思う。結局のところ、指導団体もダイバーもお互いに不幸にならないか?

 不毛の議論にならないように、まずはレジャーダイビングとしての安全を確保する上で考えることは何か?第一は、窒素をためすぎないことである筈だ。そこで筆者が考えたいのが以下の4つである。

#1.もぐりすぎない
 レジャーダイバーである限り、ダイブコンピュータが指示する無減圧限界ぎりぎりで潜らない。
 浮上に時間をかけることで、結果として圧力下にいる時間が長くなる可能性がある。人が許容できる血中窒素の量を超えるといけないわけだから、浮上に時間がかかる分をどこかで相殺する必要がある。そうなると、深場にいる時間を少し短くしないと安全を保てない。このようなことからも、無限圧限界ぎりぎりで潜るのは避けるべきだろう。

2.呼吸はゆっくり
 海の中で不必要にゼイゼイとしていては呼吸が多くなり、その分窒素をためこむし、頭痛のもとである。だから無駄な動きはしないべきで、そのためにも中性浮力が重要の筈である。

3.安全停止は「窒素の完全排出」ではない
 雑誌等々でよく出てくることだが、水深5mでの安全停止は血中窒素の完全排出ではない。圧力下にいる以上、窒素は溜まっている。だから、安全停止後に急浮上するのは危険である。

4.残留窒素を翌日まで持ち越さない
 筆者がCカードを取得する過程で、翌朝までに残留窒素の排出が終わらないようなダイビングはするなと習った。体を減圧症に近づけないためには有効の筈。

# 雑誌等々で以前より何かある度に言われていることだが、ダイブコンピュータに組み込まれているアルゴリズムにしろ、ダイブテーブルにしろ、ある身体条件の人にしか当てはまらず、万人に必ず当てはまるものではないことだ。よって、ダイブコンピュータの無限圧潜水限界内でも減圧症にかかる可能性を否定できないわけだ。
 しかも、現在のところ、減圧症にかかりやすいか否かを判定する方法は簡易的なものを含めてもないようだから、自分自身が減圧症にかかりにくいか否かをある程度定量的に調べる術がない。
 身長、体重、体脂肪量(もう少し詳しくするとしたら筋肉量か)からある程度の精度で計算できるのであればよいが、現状はないようなので残念である。
 減圧症治療についても、現状はチャンバーでの再圧が主なものだが、全く別の、例えばマイクロバブル制御の技術が発達して、関節部位への注射(のようなもの)で治療できるような技術が出来たらよいな等と考えたりもすることがあるが、現状は見込みが立ったというような話はないようで、これまた残念である。

# 気をつけることと言えば、上記の4項目以外に、これまた雑誌等々で言われていることだが、体調不良の際には潜らない、寝不足は避ける、水分をよくとる、所謂ヨーヨーダイビングは行わない、といったことである。(あと、肥満の人も注意)

 かつて、筆者がCカードを取得したときは、「ダイビング終了後12時間は飛行機搭乗禁止」だった。
今はこれが概ね18〜24時間の様子。また、安全のためには潜りすぎないほうがよいから、長いツアーでは中1日潜らない日をつくれという記事を以前に読んだことがある。これは、体内の残留窒素の完全排出のためだろう。
 ただ、これもよくよく考えてみよう。上記の通り、筆者がCカードを取得する過程で、翌朝までに残留窒素の排出が終わらないようなダイビングはするなと習った。要は潜りすぎないことだ。筆者は医学の専門家ではなく、「あなたの考えは危険だ!」と言われるかもしれないが、潜りすぎなければ別に中1日潜らない日を作る必要まではないと言えないのだろうか。例えば1日1ダイブの日があればよいのかもしれない。でも、以前よりアルゴリズムは厳しくなっているから、やはり中一日潜らない日を作る必要があるのか・・・?
いたちごっこのような、何とも複雑な気分である。

=おまけ=
 もし、筆者がダイビングショップの経営者であるとして、低速浮上をお客さんに守ってもらおうとしたら、ボートから垂らす潜降ロープに目盛りを付けることを考えるかもしれない。恵比寿潜酔会では「ロープをつかんで1秒に拳1つ分ずつ浮上すれば概ね大丈夫のはず」との意見がある。これなど有効な方法だ。
#  ただ、もし潜降ロープがない場合どうするか?垂直に毎秒10〜15cmの速度(6〜9m/分)で浮上しろと言われたら大変かもしれない。ここで一つ提案したいのは、海況が悪くないときや流れがないとき、また近くに他のボートがない場合に筆者が行う方法であるが、安全停止が終了したらボートから少し離れ、そこからラダー付近をめがけてゆっくりと斜めに(フィンキックを少ししながら)浮上する方法である。
 垂直浮上は最短距離での浮上なので、浮上速度の微調整はなかなかできないかもしれないが、斜めに浮上すれば、移動距離をかせぎながらの浮上なので、浮上速度の微調整が比較的とりやすい。但し、これは海況がよくないときは、水面近くでラダーに体をぶつける可能性があるので行わないほうがよい。


文責:折原 俊哉(会員)

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